2014. Sep. 25
1968年に公開された“猿の惑星”は、ラストシーンで私たちのこころに強烈なメッセージを残した。そしてそれが空想の世界であると解っていても、地球の未来に不安を覚えたものでした。その衝撃は今もなほ語り継がれる、SF映画の金字塔。あれから40数年を経て、“猿の惑星”はいままた私たちに新たなメッセージを叩き付けました。人間が犯した罪の重さは、そのまま人間たちへの罰になり返礼されることに・・・。
世の中がすべて人のために動くと、その反動で何らかのひずみを生む。そんなことをテーマにした、SFは数えきれない・・・。だが、そのすべては科学的根拠をたどって考えられた空想を超えたものばかり。空想が現実となることは、プラスと同時にマイナスをも生み出す。そんなことはもうみな知っているのだが、人間はその欲望を止めることが出来ない。この先地球、いや人間は何処に向かって行くのでしょうか?
新シリーズの“猿の惑星”は今回で二作目。そして制作会社は三つ目になる。2001年にティム・バートンが監督した作品は、再映画化とされ注目を浴びたがあまり評価されず一本で終了。たしかに第一作には到底かなわない出来映えになり、ファンをがっかりさせたは事実。彼の作品はとても好きなので、わたしもすごく期待していたのですが・・・ちょっと残念でした。
2011年からはじまった、このシリーズ。“スターウォーズ”のように歴史を紐解くスタイルで、新しく生まれ変わったもの。それが実にいい感じでまとめられている。時代に合わせた脚本づくり(核戦争からウィルス汚染)が、実に見事にはまっています。そして映像の最先端デジタル技術を駆使し、観るものを圧倒するリアリティを生み出した。今回の凄い所は、リアリティを追求するのに50ものカメラを駆使して撮られた、3Dモーション・キャプターによる視覚効果の凄さ。役者(モーション・アクター)と呼ばれる専門の俳優さんたちが、猿たちの動きをつぶさに疑似しそれをカメラで拾うという作業。そして最後にCG技術で融合し映像化する、とてつもない技術を取り入れた最先端の映画である。第一作目の頃は、特殊メイクという技術で何時間も掛け俳優さんたちを変身させたのだが、それすら当時は驚きの連続。さらに進化した新シリーズは、猿たちがまるで人と同じように喜怒哀楽の表情を見せ、わたしたちに感情移入をさせる。いや、本当にすごい時代になったものです。旧“猿の惑星”は人から観た目線ですが、新シリーズはまさに猿たちの目線。主人公は猿たちなのです。それにしても主人公(猿)のシーザーを演じたアンディ・サーキスという人のパフォーマンスは本当に見事です。モーション・アクターとしては、第一人者として数多くの作品に出ていると聞きます。代表作は“ロード・オブ・ザ・リング“のゴラムが有名で、わたしが泣かされた“キング・コング”も彼だそうです。納得!!!。アカデミー主演男優賞をあげたいくらいの名演技でした。何度も言いますが、パフォーマンス(アナログ的)の凄さに喝采です。今回の作品はCGだけでは叶わない表情づくりが、絶対不可欠と知った喜びがとても大きかったです。「頭脳と身体は使うもの」と改めて人間の凄さを再認識した作品でした。次回も期待しております。このシリーズもしばらく続きそうなので実に楽しみです。Shoji UEKUSA