2014. Apr. 15
ギンレイホールにて昨年見落とした「さよなら渓谷」を観てきました。胸が騒ぐとはこんなことかも・・・。“ごく普通に見える夫婦。だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だったー。”と言う、ネタバレを含むキャッチコピーが議論を呼んだ作品「さよなら渓谷」。だからなんだと言うくらい、素晴らしい作品に出会い久しぶりにこころが揺れてます。原作(吉田修一)は読んでいませんが、間違いなく良い作品に違いありません。同原作者の「悪人」も映画化され一昨年見ましたが、この作品もとても良かったことを思い出します。今回の作品は人間の複雑な感情を、静かにたんたんと描いているのですが、理屈ではないこころの動きがじんわりと伝わってきます。きっとこの感情を説明しろと言われても、ぜったいに無理なことだと思われます。だけど、あるかも?と思わせるこころの糸が繊細に絡み、胸を締め付けます。セリフを極力抑えた演出に共感しました。観るが側に答えをゆだねた、感情移入の仕草や目配せ・・・。主人公を演じた真木よう子(かなこ)と大西信満(尾崎)は難しい役を見事に演じ、記憶にのこる作品の大きな役割を果たしました。拍手です。真木さんは、いま最も輝いている女優さんに間違いありません。監督の大森立嗣は新々気鋭の監督で、作品を発表するたび賛否両論を起こす話題の多い人。それもそのはず、父親は麿赤兒(大駱駝艦)で、弟が俳優の大森南朋である。南朋はこの映画でもいい味を出し、わきを固めています。作品は昨年、第35回モスクワ国際映画祭・審査員特別賞(「手をつなぐ子ら」羽仁進監督いらい48年ぶり)、第37回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞受賞と沢山の賞に輝き、称賛の評価を得ました。賞を獲ったから凄いのではなく、凄いから賞を獲ったことを是非自分の目で確かめてください。“人は理解することが難しい生き物。だから愛おしいものです。”
P.S. 劇中にかなこが大声で叫ぶ言葉が印象残ったので・・・。「わたしより不幸になってよ!わたしが死んであなたが幸せになるなら、わたしはぜったい死なない」胸に突き刺さる言葉ですね。UEKUSA Shoji