
2014. Feb. 17
久しぶりの日本映画。大好きな山田洋次監督作品、最新作「小さいお家」を鑑賞。この作品は前評判で、山田監督“新しい世界に挑む”と評されたもの。そして監督82歳にして創作する、記念すべき82作品目と聞けば期待は高まる。俳優さんたちは倍賞千恵子さんや吉岡秀隆、お馴染みの山田組のひとたちと、新人・黒木華(はる)さん。まずは黒木華さんの素晴らしい演技に拍手をおくります。ベテラン俳優が多く出演する中、主人公の布宮タキをけなげに、そして慎ましやかに演じ、いっぺんにファンになりました。昭和の女性の姿がそこにあり、懐かしさと静かな強さを思い出させてくれました。
さて作品ですが、山田監督がいままでテーマにして来た“家族愛”を思えば、確かに新しいジャンルへの挑戦。テーマは不倫だし、ちょっと驚きではある。しかし見終われば、やはりそこには確かな愛がちりばめられ、やはり山田作品だと印象ずけられる。昭和の時代を生きて来たわたしたちは、どこか懐かしさを覚え当時のことを思い出す。そう言えばわたしの住んでいた町(江戸川区)にも、西洋風の家が一軒あり下町には不釣合いな雰囲気だったことが思い出される。玄関脇にヤシの木みたいな(シュロ)大きな樹が立ち、窓にはステンドグラスがはまっていて5〜6歳のとき探検に忍び込んだことがある。途中怖くなりすぐに飛び出て来たことがいまも記憶に残っています。
映画は昭和の初期から今の時代までを、回想しながら進みますが、むかしでも“不倫”ってあったんだ!なんて子どもみたいに感じてしまう自分がいるのに驚いています。“不倫”って言葉だけ拾うとなんかドロドロしたイメージですが、この話はそんなこといっさい感じさせません。許されることではないのだけれど、何と言うか“人間だからしかたないよなァ〜”なんて思っちゃいます。それにしても主人公がそんな事件を、ず〜っとこころの隅に抱え、苦しみ生きた長い人生がとても悲しかったです。だれも悪くなく、だれのせいでもない、ただその時にまぎれもなく生きていたという事実が・・・。印象深い1シーンは、板倉が出征前にタキをそっと抱き“一生忘れないよ”とつぶやくところ。この言葉は罪深いデス!平成生まれのひとには?でも、とてもいい映画です。是非、見てください。この時代を生きたわたしには、映画の中身はもちろん、白い割烹着も、セルロイドのキューピー人形も、そしてエンピツを舐める仕草もぜ〜んぶ大好きな昭和です。懐古趣味だろうが好きなものは好き、それでいいのだ!!でも、この映画日本人以外、解るかなァ〜???
P.S. 昨日TVのニュースで第64回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)獲得が報じられました。彼女のもつ
雰囲気は独特なものがあり、これからが多いに楽しみな女優である。まずはこころから“おめでとう”の言葉を贈ります。