その人の名は、ボブカーリー。偶然に観たTV番組で紹介をしていました。職業はカメラマン。ちょっと、いや大分太めの体系はいかにもアメリカの中年男性と言ったところ。ただ顔はどことなく愛らしく、体系も均整がとれそれほど見苦しくない。こんなことを書くと誤解されるので一応、わたしはそっちに興味はありません。
さて、そのピンクのチュチュを着た裸のおじさんが自らをモデルに撮った写真の数々。世界中の風景の中にとけ込み、ユーモアと哀愁に富んだ写真にわたしは素直に感動しました。
もともとアリゾナで写真家として働いていた彼だが、友人の紹介でリンダさんと出会い結婚。とはいってもプロの世界は厳しく、なかなか思うような仕事には恵まれず苦しい生活が続いたようである。そんなある日、舞い込んだ仕事が“アートとしてバレエを表現して欲しい”という依頼・・・。引き受けるには引き受けたが、まったくバレエを見たこともなく途方にくれる。そんな時、奥さんのリンダに相談をすると、「あなたのようにバレエに興味のない人でも楽しめる写真を撮れば良いのよ』とアドバイス。その言葉にアイデアが思い浮かび、一枚の写真が出来上がった。それを奥さんに観せるとお腹を抱え大笑いした。期せずしてその写真が話題に・・・。
仕事はそれから順調に進んだが、ボブさんはニューヨークで勝負したいと一念発起。リンダさんも賛成し、二人はあこがれの地へと・・・。
拠点を移したものの、そうは簡単に仕事が舞い込む程ニューヨークは甘くなかった。そんな苦しい状況の中、さらに試練が襲う。リンダさんに乳がんが見つかり、緊急手術。手術は上手く言ったのだが、ある日がんが肝臓に転移しているのが見つかった。それもすでに末期の状態。苦しい生活と治療が続く中、気丈に振る舞っていたリンダさんから、日に日に笑顔が消えていった。何か出来ることはないのかと、悩みもがき苦しんでいると、あることがフッと思い浮かんだ。そうあのチュチュを着て撮った写真を、はじめて見たときのリンダさんの大笑いした瞬間を・・・。これがこの写真集のはじまり。
こんな愛にとんだ写真の数々は、どれをとっても本当に美しい傑作ばかり。まさに愛は強し。だがどの写真も、そんなストーリーがなくても充分すぎるクォリティの高い写真ではないでしょうか?
笑うことは、何よりの薬。「苦しむ奥さんに、笑ってほしい」、そんなシンプルな思いからはじまったことが、今日もだれかを幸せにしています。みなさんどうぞ鑑賞を・・・。
P.S. リンダさんは今も病気と戦いながら、元気に暮らしているそうです。そして、二人は乳がん患者を支援する「The Tutu Project」を設立。いまも病と闘う多くの人に笑顔を取り戻してもらうため、世界を周り写真を撮り続けている。
「The Tutu Project」