2013. Dec. 17
緊張に身が震え、あっと言う間に時間が過ぎた。時間を忘れてしまうほど、久しぶりに緊張感が連続する映画に出会った。今年度アメリカで、あの「アバター」を公開初日記録で抜いたと聞くこの作品。冒頭の優雅な宇宙遊泳は誘い水。あっという間に宇宙の本当の怖さを体感させる、矢継ぎ早の展開が始まる。何度も知らず知らず息を止めている時間があり、気がつくと身体を強張らせている自分。パニック映画やスリラー、オカルト、サスペンスなど、数あるドキドキとは異なる現実的な怖さを体感させる3D作品になっている。宇宙に馳せる人間の夢と希望は、それと背中合わせにこんなにも恐ろしい現実を背負っているのかと思い知らされる。主演の2人が素晴らしい演技で、ぐいぐいと映画の中に引き込んでくれる。サンドラ・ブロック、そして、ジョージ・クルーニー。見事としか言いようのない完璧な演技に、まるで自分もいっしょにいるような気になる。そして3D映像の素晴らしさに驚愕する。わたしたちが知っている地球の美しい蒼さは、時折ニュースで流れる宇宙開発の現場シーンから送られてくる。先日も“若田さん”のステーションからの放映が流れ、ゆったりと無重力遊泳の中でのメッセージ。これだけ観れば、なんと優雅で気持ち良さそうと思い、一度でいいから体験したいと思うが心理だろう。しかし、この映画のリアルな映像演出を観たあとはどうだろう、そう容易く宇宙に行ってみたいなどとは軽口が言えなくなる。宇宙は無減で深い。その闇に飛び込む勇気は、並の覚悟では到底無理な話。やはり志しのある、使命感を持つ一握りの人たちだけが今は行ける世界なのだと思える。すでにアカデミー賞の呼び声高い、サンドラ・ブロックの演技には何度も涙を誘われる。窮地を乗り越え宇宙船にたどり着き、すべてから開放されたかのように宇宙服を脱ぎ捨て、無重力の船内に浮かぶ姿は船内に散乱するコードと絡み合いまるで“羊水の中に浮かぶ胎児”のようで美しい。もちろん計算された演出にちがいないが、心にのこるワンシーンである。一年の終わりに人間ドラマをしっかり凝縮した、生命力を感じさせる傑作のひとつに出会うことが出来ました。
心臓の弱いひとには、あまりお薦めできませんが・・・。