2012. Dec.18
ネットで上映を知り衝動的に出かけたが、ひさびさの重たい映画に遭遇した。監督はフランスの新鋭28歳のレア・フェネールと言う女性。この映画がデビュー作だそうだ。大女優カトリーヌ・ドヌーヴがその才能を称賛したと伝えらている。フランス映画と言えば、なにか華やかで、そしてお洒落なイメージ。エッフェル塔、シャンゼリゼ、セーヌ川、ワインなどなど・・・。がこの映画そんなフランスは一切出てこない。何を伝えようとしているのかは、観た人間がそれぞれで考え感じることというような作品である。マルセイユの刑務所を舞台に、3人の人間が抱える愛のかたちを表現している。だがその愛は重たく悲しみに包まれている。刑務所の面会室に3人はいるのだが、まったく関わりを持たない。それぞれが愛(収監されたひと)を確かめるように、そこに足を運ぶ。サッカーに夢中の未成年の女の子ロール、人間関係や仕事でうだつの上がらないステファン、異国の地で亡くなった息子の死を確かめに来たゾラ。三者三様の現実を抱え、懸命に生きそして愛を確かめようとしている。作品はまるでドキュメントでも見ているような錯覚さえ覚える。実にリアルで淡々と静かに進んで行く。その間ず〜っとピアノの旋律が流れ、主人公たちの苦悩やこころの叫びに同調する。タイトルの「愛について、ある土曜日の面会室」はこの映画のコンセプトそのまま。壁の向こうは、愛に不器用な人間が拘束され、その人たちを訪ねる者もまた愛に不器用な人間であることが良く解る。壁一つ挟み表裏一体の世界がそこに描かれている。正直いま、この映画を見て感動できる人はある意味幸せな人たちに違いない。フランスが舞台にはなっているが、世界中のどこにでもある事実がここにはある。厳しい現実がストレートに表現され、夢や希望などと言った曖昧な考えは打ち砕かれてしまう。ひとつだけ確かなことは、みなが必死の愛を確かめようとしていることである。人生は思いどおりには行かない。でも許すことで許され、再生への一歩を進むことが出来る。この映画はそんなメッセージを送っているに違いない。最後にあまり知られていない個性的俳優さんばかりでキャスティングされていますが、その辺が逆にリアルで身近な出来事に感じました。ゾラを演じたファリダ・ラウアッジの母役が特に印象的。母の愛は“海より深い”と改めて感じさせてもらいました。良い映画なのは間違いありません。ですがくれぐれも元気なひとのみお薦めの映画です。