2012. Apr 02
とんでもない作品に出会った、そしてひとを知ってしまった。ピナ・バウシュ。その名は知っていたが、そのすべてが未知のもの。なんてもったいないことをしていたのだろう・・・とつくづく思う。彼女はダンサーのあこがれ。いやそれ以上の存在であることは、きっとこの映画を観れば確信になる。ダンスの枠を超えた世界観で、多くの人に感動を与えてきたピナ。その感性は追随をゆるさない、圧倒的パワーを秘め見る側のこころを揺さぶる。彼女の振付は言葉を必要としない。圧巻のパフォーマンスである。09年に急死したピナのために創られたこの映画。この映画はピナと深い親交がある名匠ヴィム・ヴェンダース監督が手がけた作品。ピナの舞踏の世界観に見入られ、ドキュメンタリーの製作を進めていたという。だがどうしても映像で表現するのは難しいと、監督を多いに悩ませた彼女。ようやく出した結論は3Dという映像効果。ようやく出た結論からいざ撮影という時、彼女が他界。製作は頓挫したかに見えたが、家族や彼女の率いるヴェッパタール舞踊団のダンサーたちから熱い思いが、監督を動かし、この作品が生まれたと聞く。とにかく凄いのひとこと。人間の肉体で、ここまでこころのうねりを表現できるものなのだろうか。音楽やカメラアングル、舞台装置、そして光と影、自然や街並の風景。すべてが一体化している。不自然だが心地いい、言葉は必要ではない。喜び、悲しみ、そんな単純なものでない憂いや嘆き、こころの叫びを舞踏で表現しているダンサーたち。賛辞の言葉すら恥ずかしい、本当に凄い彼女の世界。きっとこれはピナそのものに違いありません。ぜひ、観てください。
もっとはやく知っていれば、生の舞台を観れたのに・・・。映像でこれだけ凄いのだから、生で観たらどうなることやら。見ている人たちが羨ましい。彼女はこの映画の中で出演している、団員ひとりひとりにこころを震え立たせる言葉を言っている。それがその能力を引き出し最高のパフォーマンスを生み出す。人種や年齢を問わず、彼女に心酔する団員たちの顔はみな美しく年輪が刻まれていました。最後に一番印象的だった言葉をひとつ。“踊りなさい。自らを見失わないように。”pina