
2011.Apr.15
“アンソニー・ホプキンス”の顔が大きく出ている広告のビジュアルが「羊たちの沈黙」「ハンニバル」を連想させる。彼はその作品でオスカーを手にした。強烈な個性と演技力で、鳥肌がでるようなインパクトを覚えたことをいまも忘れない。そしてもうひとつ、’73に公開されたウィリアム・フリードキン監督の“エクソシスト”。この映画もまたホラーというジャンルにもかかわらずアカデミー脚本賞を受賞している。今もこころに刻まれる強い印象の作品である。「ザ・ライト」、この2つが重なるとなれば、もう見ないではいられない。
さて、映画だが良い意味で、わたしが描いたイメージを完璧に壊した作品だったことをまず報告しよう。オカルト映画の金字塔ともいえる「エクソシスト」。あの身も凍る旋律は、何度観てもドキドキする。特殊メークや特殊効果、そして忘れられない音楽や効果音。どれだけわたしたちを驚かせたことだろう。そのイメージが頭に焼き付き、妙な潜在意識で望んだ「ザ・ライト」。終わってみればオカルトでもサスペンスでもスリラーでもない、とてもまじめなある意味、実話(ドキュメント)タッチの作品だと知ることになる。21世紀のいまも実在する正式職業のエクソシスト。イタリアのバチカン公認で養成講座まであり、そこで修行を重ね“悪魔祓い”を遂行する神父たちがいる。それを題材に、実在する一流エクソシスト・ルーカス神父(ホプキンス)と主人公の神学生マイケル(コリン・オドノヒュー)が体験する“悪魔祓い”の真実を描いている。物語は見習いの神父が自分の意志とは関係なく、知らず知らずエクソシストへの道に呑み込まれていく話。遠近感を象徴したカメラワークで、とても丁寧にそしてリアルに表現されている。出ているだけで圧倒される、ホプキンスの怪演は流石の一言。だが驚くのは、映画初主演のコリン・オドノヒュー。ナイーブできめの細かい表情と演技はただ者ではない。名優ホプキンスと互角、いやそれ以上の演技で真っ向勝負をしている。舞台俳優としてキャリアを積んでいるらしいが、本当に素晴らしい演技でだった。どうやら悪魔をこころの弱った人間に取り付くようだ。みなさん気をつけましょう。
おまけの話だが、主人公の父親役でルトガー・ハウアーが出ていました。大好きな映画「ブレード・ランナー」で見せたラストシーン。レプリカントの悲哀に満ちた美しい最後は忘れられない名シーンである。