

2011.Apr.11
ブログの更新がひと月以上空いてしまった体たらくをお許しください。震災以来、そんな気分にならずもんもんとした毎日が・・・。やっとのことで観たかった映画のため、久しぶりに銀座まで足をのばした。新聞のコラムに「わたしを離さないで」の記事が載っていた。それを読み、強く観たい衝動にかられ出かけることに。ほんとうはこういう時期なので、明るい気分になるような映画を選ぶのが良いのかも。しかし、観たいという気持ちを抑えきれず鑑賞に至った。
「わたしを離さないで」というタイトルだけ聞くと、何か恋愛映画のようだが、この映画驚くほど内容は衝撃的。かなり重たいので、必ずしもお薦めは出来ません。だが個人的にはすごく感動したのと、テーマが明確で観るものに考えさせる作品だと言っておきましょう。わたしには、きっといつまでも記憶に残る作品のひとつになるに違いありません。
たくさんの映画をいままで観て来たが、永く余韻にしたる映画には久々に出会った気がする。原作はロンドン在住の日本人作家カズオ・イシグロのベストセラー。この作品の製作総指揮を、氏自ら手がけているのにも何か強い意志が感じられる。恥ずかしいが氏の作品は、読んだことがない。だが映画を見終わった瞬間、原作を読みたい!そしてもっと深く主人公たちに触れたいと正直に思った自分。
シネマ69で鑑賞した「HEREAFTER」も『命』をテーマにしていたが、最後で救われる展開。だがこの作品、テーマは同じでも内容の重さにとことん押しつぶされ、虚脱感を味わう。人間とはなんと罪深い生き物なのだろうと思う。SFというジャンルにくくられる原作なのだが、かなり現実味があり、その分より怖い。舞台設定が未来でなく過去だったり、イギリスの郊外の牧歌的環境だったりし、全体にセピア調の雰囲気が美しい分、また尚いっそう結論が重たくのしかかる。主演の若手俳優陣3人(キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ)が、とても素晴らしい。これからの映画界をきっと引っ張っていくだろう。脇をかためた、シャーロット・ランプリングのクールな存在感も見逃せない。劇中、「提供者」とか「介護人」などといった単語が普通の日常会話の中に飛び交う。その意味に込められた怖さは悲しさと変わって、最後わたしたちに迫ってくる。トミー(アンドリュー・ガーフィールド)が、わずかな希望を打ち砕かれ慟哭するシーンは観ていて辛い。だが、自分はその前のトミーとキャシー(キャリー・マリガン)が愛を確かめるシーンが切なくて涙が止まらなかった。
好き嫌いはあると思いますが、名作だとわたしは思います。