2010.Sep.20
モントリオール世界映画祭で、最優秀女優賞を受賞した「悪人」を鑑賞。受賞したのは深津絵里さん。その昔、JR東海「クリスマス・エクスプレス」のCMで見て以来のファンである。当時17~8歳くらいだったように思う。色白で儚げな容姿が印象的で、真っ赤なルージュをひいた唇がいまも鮮明に浮かび上がります。寂しそうにホームにたたずむ姿(BGMは山下達郎)、そんな光景に世の若者はみな虜になった気がします。
さて本題の映画ですが、とある週刊誌Gに、井筒監督がいつもの辛口コメントを載せていて、それを読んでの鑑賞になりました。監督曰く、「どこが悪人じゃ!!」。確かに言われてみればそうですが・・・。井筒監督は直球勝負のひと。「復習するは我にあり」みたいなほんものの悪を見たかったようです。わたしは深津絵里さんはもちろん、妻夫木くんも頑張っていたと思います。聞けば妻夫木くんはこの役を自分から要望したとのこと。ちゃんとそれは形になっていたと思います。悲しいかな井筒監督も言っていましたが、二人ともどっから見ても良い人。髪を茶髪にして、シャコタンの車をブイブイいわせても、どこかやさしさがにじみ出てしまう。でも、この映画は本当の悪を描きたかった訳ではなく、人の内に潜む誰もが持っている悪を描いたもので、わたしは満足しました。脇を固めた俳優さんたちが、また良かったです。特に柄本明さん、樹木希林さんは胸に迫る演技。また、岡田将生、満島ひかりの二人もすごく良かったです。子憎たらしい現代の若者をしっかりと演じていて、観る側にきっと“お前たちの方が悪人じゃ!”と思わせたに違いありません。この二人も今後が楽しみです。
たかが映画と思って聞かないで欲しいのですが、最近簡単に人を殺すという事件がやたらと多いのですが、いつから人間はそんなに命の重さを軽んじはじめたのでしょうか?辛抱とか我慢とかいうのは、もう無くなってしまったのでしょうか?そんなことを見終わってから考えてしまいまいた。劇中で柄本明演ずる被害者の父が言った「あなた。大切なひとはおらんけ?」の言葉が忘れられません。