2010.Apr.4
銀座の雨は何かせつない・・・。見たくてしょうがなかった映画を観に、シネセゾンにやってきた。その映画は「やさしい嘘と贈り物」。さて、何から話そうか迷ってしまうほど話したい事がある。だが率直に言うと見終わった後、人と話すのが何か億劫でしばらくひとり物思いにふけってしまったのも事実。やさしさに満ちた映画で、とても好きな作品となったのだが・・・。内容を話すのは少し控え、ちょっと横道にそれた話でもしょう。主演の二人、マーティン・ランドーとエレン・バースティンが、ほんとうにかわいい男と女を演じていて、こんな年の重ね方をしたいと素直に思った。まずはマーティン・ランドー。78歳になり、まさに円熟した演技で孤独と悲哀を見事に表現していた。彼は人気TVシリーズ「スパイ大作戦」(1966~1973)で変装の名人ローランを演じ人気を博していた。ドラマの中でシナモン役を演じたバーバラ・ベインとは私生活でもほんとうの夫婦だったことを覚えている。当時TVに釘ずけになり、わくわくしながら毎週見ていたのが懐かしい。彼はいままで脇を閉める役が多く、78歳にして主役を手に入れ、すばらしい演技を見せている。顔に刻まれた年輪は嘘をつかない。その証拠にアカデミー助演男優賞に2度ノミネートされ、1994年「エル・ウッド」で見事受賞している。そう言えばスペース1999の指揮官役も、かっこ良かったなァ~。
さて、もうひとりの主役、エレン・バースティン。彼女の演技も慈愛に満ち、本当にすばらしい。とってもキュートな老婦人を見せてくれている。今、77歳。こんなおばあちゃんなら、恋をしてしまいそうである。森の中をふたりが散歩し、木陰で彼女が流す涙はこころが洗われるほど美しい。とても自然で、その涙の意味が最後に解る。いっぱい泣かされたが、このシーンが一番好きなわたし。昔から好きな女優さんのひとりで、作品もかなり見ている。どの映画も印象に残るものばかりである。その中でもわたしがとくに印象深いのは、「女の叫び」(1978年・ギリシャ)という映画。メリナ・メルクーリを向こうに回し、ガップリ四つの演技で、当時怖いくらい圧倒されたのを覚えている。王女メディアの現代版とも言われた子殺しの囚人役を演じ、その鬼気迫る演技は今も忘れられない。ほかにも「ラスト・ショー」、「エクソシスト」、「ハリーとトント」、「アリスの恋」とあげたらきりがない。「アリスの恋」(1975)で逞しい母と女を演じ、この年アカデミー主演女優賞を受賞し、名実共に大女優の仲間入りをした。あげた映画は、どれも素晴しい、見て損のない名作ばかりである。
「やさしい嘘と贈り物」の話は、今回はおあずけ。語ると終わらなくなりそうなので、やめておきます。すみませんが、観てください。いろいろな意味で、人生の終わり方や終わらせ方を考えさせられました。最後にもう一度、エレン・バースティンは本当に奇麗でした。若い頃よりずっと今の方が奇麗かも・・・。もうひとつ、この映画のニック・ファクラー監督が若干24歳というのに、驚きと喜びを大いに感じた。若い監督がこういう映画を撮ることがうれしい。これからが楽しみだ。
P.S. 映画の中で、2人の若い頃の写真が出てくるのですが、「マーティン・ランドーとバーバラ・ベイン」の2ショットにたぶん間違いと思います。なつかしい~。確かめて観てください。
余談ですが、もうひとつ思ったことがあります。この映画を見終わった後、なぜか「また君に恋してる」という曲が頭に浮かびました。”また君に恋してる いままでよりも深く、まだ君を好きになれる 心から・・・“
もとはビリー・バンバンが歌った「いいちこ」のCM挿入歌。いま、坂本冬美がカバーし、大ヒット。この詩はこの映画そのまま。こちらの曲もお薦めです。