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よもやまシネマ697 “異人たち”
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2024.6.11.

気になっていた作品を見て来ました。その作品は山田太一さんの原作、山本周五郎賞を受賞した「異人たちとの夏」を題材にした異人たちという映画。この原作は日本でも過去に大好きな大林監督の手によって映画化されています。大林監督らしい題材で、とても良い作品でした。調べると山田太一氏の作品の中では、異例の設定と内容で人の死をテーマにした唯一のものらしい。この作品は娘さんによると、山田氏の自叙伝的なものだと言っておられます。脚本家として一時代を作り上げた氏の作品を振り返ると、確かにこのようなテーマ(過去を振り返る)の作品はあまり知らない。いつも過去でも未来でもない、現在を映し出す作品が多かったのは確かなこと。大林監督の作品を見た時は大林ワールドに飲み込まれ、山田太一氏の原作だとは、気づきませんでした。勉強不足な私です。

さて、イギリスで創られた作品、異人たちとは・・・。正直言いますが、初めの導入部から何となく重たい感覚が身を包み、少しホラー的な感覚を覚えました。また、主人公の人物設定がLGBTQになっていて、ある意味イギリスぽっいなぁ~~と感じました。この人権問題は今や世界中に広がっている大きな問題ですが、やっぱりイギリスが頭に浮かぶくらいイメージは浸透しています。芸術家などアートや音楽などのクリエーターが多い文化発祥の地という条件もあると感じます。今作の主人公も小説家という設定になっているのだが、これは山田太一氏の私小説と言われる原作を忠実に再現しているようです。

日本の原作が海外のクリエーターから注目をあび、作品化に至ることを誇りに思います。最近このようなケースが増え、ようやく日本の文化や芸術が世界と肩を並べるところまで来たのだと、感じています。

今作品は社会的背景が重たくのしかかっているので、重たくはなっていますがこんな角度で表現する形あるのだと個人的には感動しまいた。ラスト近くでは、ようやく主人公たちの気持ちに少し近づけたようで静かな涙を流してしまいました。愛にも色々な形があるのは承知していますが、自分の中にない物ですので本当に分かっているのかと問われると自信はありません。でも今回の作品でそのことで悩む主人公の葛藤が、とても苦しく重たいものなのだという事が伝わり本の少しLGBTQ近づけたかも知れません。

考えるに近年見た作品の中で、印象に残っている作品を拾い上げるとホエールや少し前のチョコレート・ドーナツ、などこのテーマの作品が多いことに気づきました。草彅剛くんのミッドナイトスワンもそうでした。人が人として堂々と生きていける社会に早くなることを願うばかりです。

主人公の二人を演じた俳優さんは見事な演技で、とても繊細かつ壊れやすいガラスのような表現力は素晴らしかったです。互いを思いやりながらも、不安定で不確かな心の揺らぎを言葉や表情でしっかりと伝える2人は甲乙付け難い演技になっています。作品の中で使われる挿入音楽がまた、心を揺さぶる演出となり感性を刺激すること間違いなし。サントラがあれば、即購入です。幻惑的な映像表現も見所の一つですが、調べるとデジタルではなく35mmフィルムでの撮影との事。物語の内容にピタッとハマったクオリティの高い映像表現になっている素晴らしい作品です。ぜひ、劇場に足を運び鑑賞してください。

良い作品に出会うと、心が豊かになり幸せな気分になります。




# by eddy-web | 2024-06-15 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ696 “マッドマックス:フュリオサ”
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2024.5.31.

ジョージ・ミラー監督の最新作、マッドマックス:フュリオサを鑑賞。久しぶりのエンタメ作品の上、大好きなマッドマックスシリーズ最新作、そして最近一押しの女優アニャ・テイラー=ジョイが主演と言うことで、期待大です。初めてマッドマックスを観たのは今から45年前。当時ではあまり馴染みのないオーストラリア作品で、とてつもないカーアクションが話題となっていた。今やアメリカでもレジェンド俳優となっているメル・ギブソンの出世作品でもある。今みたいにCGなどない時代のアクションシーンは、これ本当に演じているの?と思わせる際どいシーンの連続。噂で、「大型トラックにバイクが衝突するシーンではスタントマンが死んだ」と実しやかに話題となったのを覚えています。近未来バイオレンス映画は、それまでに見たどんな作品よりスピード感に溢れ、そしてリアル。目を覆うシーンもたくさんありますが、確実に若者のハートを掴んだ作品です。使われた車やバイクも若者たちの心を動かしたのは間違いない。日本製のKAWASAKI Z1000などが登場し、若者の高揚感を煽った。そしてマックスが操るメカ(車)インターセプターのカッコ良さったら、もうたまらない。映画のために1973年型フォード・ファルコンXBクーペをベースにカスタマイズし、フロント周りにコルドマスクを装備し、V8気筒のスーパーチャージャー付エンジンを搭載。スイッチを入れた瞬間に加速し、時速300kmに一気に到達するエンジン音に、カーマニアはもちろん映画ファンたちも画面に釘付けになった。作品は今も色褪せない、バイオレンスカーアクションの金字塔となっている。

あれから時がたち、30年ぶりに復活した新シリーズは2015年に公開され作品マッドマックス/怒りのサンダーロードは、主演の座をマックスからフュオリサへとバトンタッチ。もちろんマックスも登場し活躍しますが、完全にフュオリサがメインになり物語は創られています。主人公フュオリサを演じたシャーリーズ・セロンは頭を丸刈りにし鬼気迫る演技が話題となり、素晴らしい作品となって帰って来ました。ジョージ・ミラー監督のクリエイティブな演出に、評論家はもとよりファンは度肝を抜かれスクーリーンに釘付けにされた。その年のアカデミー賞を筆頭に多くの映画祭で賞を獲得し、大きな話題となったのを覚えています。新シリーズは、実写とCGを巧みに組み合わせ、それまでのアクション映画を弾き飛ばすような進化を遂げ、超エンタメな映画となり再び私たちの前に登場しました。何もかもがカッコ良すぎて、観終わっても興奮が冷めない状態が続きました。

さて、今作は「フュオリサ」誕生秘話ともいうストーリー展開になり、物語が進みます。前作の前日譚とも言えるフュオリサの

10歳からの15年間を長い旅路を追う。いつも感じることだが、撮影クルーたちの熱量が伝わる派手なアクションシーンとそれを演じる個性豊かなキャラを演じる俳優さんたちの魅力が満載です。そして欠かすことのできない、大改造をしカスタマイズされた車やバイクもさらにグレードがアップ。そのこだわりたるや、観ていてひしひしと伝わる演出の数々。もうたまりません。

前作で主演し高い演技能力をみせたシャーリーズ・セロンに変わってフュリオサウィ演じたアニャ・テイラー=ジョイ。きっとプレッシャーもあったかと思います。ですが映画を観て、セロンに負けていないことがはっきりと確認できます。細身の身体をこれでもかこれでもかと追い込んだ演技力が伝わり、胸が熱くなります。主人公の過酷な人生を真っ向から受け止めた、素晴らしい演技ではないでしょうか?感動しました。彼女の容姿と存在感には以前から魅力を感じていた私ですが、今作を観てさらに増すことになりこれからますます目が離せません。久しぶりにスカッとする高揚感に包まれた鑑賞です。みなさん、お勧めです。ぜひ、ご覧あれ!!

P.S. 先ほど個性的溢れるキャラたちと言いましたが、これらはやはり衣装やらメイクやらの縁の下の力(スタッフ)の総合力。カメラワークや音響効果、そしてメカやスタント全てが結集しての作品です。スタッフの皆さんに大拍手です。フュリオサの仇敵として登場する、武装バイク軍団を率いるディメンタスを演じたのが、クリス・ヘムズワース。私が記憶している限り初の悪役。この人も役に合わせ、究極の身体創りをする俳優さんで有名。太くなったり、細くなったりは大変ですがそこは俳優としての誇りがあるのでしょう。顔が優しいので、最後まで憎たらしくは感じませんでした。やっている事は極悪非道でしたがユーモアも感じさせるキャラだったので、なんかあまり憎めませんでした。



# by eddy-web | 2024-06-02 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ695 “ベルリン・天使の詩”
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2024.5.25.

久しぶりに午前十時の映画祭にやって来ました。見落としてしまった名作や、もう一度観てみたい心に残る作品を見せてくれる唯一無二の企画。今までも随分とお世話になっているが、久しぶりの鑑賞である。作品は作年話題となった“ PERFECT DAY”監督、ヴェム・ヴェンダース氏の不朽の名作、ベルリン・天使の詩1987年)。TVでは鑑賞していたが、劇場で見るのは初めて・・・。朝イチで自転車を漕ぎ、やって来た錦糸町。今日はたまたま稽古が休みの土曜日。また普段は仕事の都合で、朝の10時に来れることはまずない。それでも来たくなるのは、魅力溢れる作品のラインナップにある。

1987年公開の作品は、どんなに時間が経とう輝きを失わない。ヴェンダース監督の創り上げる世界は、誰も真似のできない独特なアート思考の強さにある。その魅力の虜になったファンはわたしを含め世界中にいるに違いない。名作とはこのような作品を言うのではと、再び感動したベルリン・天使の詩

夢なのか現実なのかの隙間を浮かび上がらせ、人の心に宿る生きることの意味を優しく紐解く物語はとても愛おしく沁みてくる。物語の冒頭、モノクロの映像に浮かび上がる高い建物の上に立つ一人の男。今にも飛び降りそうなそんな場面だが、実は男はじっと下界を見下ろし人々の憂いに目を向けている。まるで絵画でも見ているような風景に、身も心も知らず知らず溶けてしまう。この想像(創造)力は一体どこからくるのだろうと、ついやきもちを焼いてしまう。映像美はもちろん、演出がまた詩的構成により唯一無二な荘厳させ感じさせる。見終わるとなんとも言えない優しい気持ちに包まれ、周りをフッと見渡してしまう。もしかしたら「この人は天使」かも?なんて・・・。

この作品のテーマは、「永遠の命よりも大切な愛」。そんな題材の映画は、ファンタジーとラブストーリーそしてヒューマンドラマを見事にミックスさせ、生涯忘れられない秀逸な作品に仕上げています。特に目を引くのは、現実と非現実との境目をカラー映像とモノクロ映像に使い分けとても分かりやすく表現している点。映画はよく総合芸術と言われるが、この作品はまさにそのもの。映画の持つ魅力を最大限に表現している作品ではないでしょうか?ちょっと褒めすぎでしょうか?私はそのくらい衝撃を受けた作品です。

主人公は守護天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)と親友カシエル(オットー・ザンダー)。二人は長い歴史を天使として見届け、人間のあらゆるドラマを寄り添うように見守ってきた。ある日ダミエルが、サーカスの空中ブランコ乗りのマリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)に恋をして、人間になることを選ぶ。これだけでも、心は夢見心地になる。言葉少ないモノクロシーンが、想像力に拍車をかけ胸を揺さぶります。守護天使ダミエルとカシエルを演じた2人の俳優さんの表情が、憂いと優しさに溢れ言葉を失います。なんだか本当の天使に見えて来てしまうのは、なんでだろう???この作品は続編に続き、カシエルが主人公として新たなストーリーを紡ぎます。

やっぱりヴェンダース監督は只者ではありません。好きな監督さんは多いですが、私にとってトップランクに位置する人物です。


P.S. このブログは1週間前の投稿になるのですが、先週から体調を崩しようやくのUP。先週ちょっと無理して立て続けてえ映画鑑賞したバチが当たったようです。疲れが溜まっていたのか、年を考えてスケジュール調整を行わなけれなと反省しています。先週見た3本はちょっとハードだったかも知れません。でも、作品は全て◎でした。やっぱりやめられません!さて今日も行くぞ!!俳優のピーター・フォークが実名で元天使として出ています。いい味を出し重要な役割を果たしているのでお見逃しなく。また、挿入歌も心にのこる素敵な旋律です。



# by eddy-web | 2024-05-31 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ694 “関心領域”
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2024.5.24.

映画配給会社A24が放つ話題作関心領域を鑑賞。A24恐るべしの印象をますます強くした作品は、静寂の中に表現され、身も凍るなんとも言えぬ不快な気分にさせられる。まるで毒を盛られ、ジワジワと全身に痛みが回ってくるかのような気分を味わう。(いまだ毒を盛られた経験ないのだが(^。^)A24作品は、良くも悪くもインパクトのある作品ばかり。好き嫌いは、はっきりと分かれるものが多い。それはいい意味、中身が濃い証拠。作品のレベルは常に高く、五感を刺激する。今作も「好きか嫌いか」と言えば嫌いな作品。以前にあげたミッドサマー以来かも知れない。制作の意図がはっきりとしていて、改めて人間の中に潜む無関心な心のひだを浮かび上がらせる傑作と言える。

今作のテーマは反戦???もちろんその要素は存分に感じられるが、そんな生優しいものではない恐ろしさがジワジワと迫ってきます。今世紀最大の負の遺産とも呼ばれるその地。舞台は第2次世界大戦中の捕虜収容所アウシュビッッツ。いまだに忘れることの出来ない大戦中に行われていた、ユダヤ人大量虐殺の場所である。ナチス・ドイツが国家を挙げて推進した人種差別によるユダヤ人絶滅政策。今も語り継がれるこの地で起きた人種隔離政策(ホロコースト)による犠牲者は、ニュルンベルク裁判では400万人の尊い命が、まるでゴミ焼却のように行われたと認定した。その数は実証されてはおらず、現在は下方修正され110万人となっている。これだけの人間の尊い命を奪ったことは、もはや数の問題ではないことは言うまでもない。アウシュビッッツやホロコーストを題材にした映画作品は、数おおく創られ、その度に二度と戦争を起こしてはならないと観客は思い知らされてきた。

さて、今作関心領域だが、今まで見た事のない切り口で恐怖心を煽る作品に仕上がっている。アウシュビッツ収容所の近くにある風光明媚で穏やかな草原。そこで戯れる、幸せそうな家族の姿が冒頭映し出される。映像も綺麗で静寂に満ちた光景は、大量虐殺が行われている世界とは縁遠い雰囲気。この家族の主人はアウシュビッツで司令官を務める将校。そしてその家族は何不自由なく暮らし、日々の生活を楽しんでいる。この映画は終始、そのような風景を映し出し裏で行われている大虐殺など微塵にも感じさせない。そこがこの作品の、凄さと言える。そんな家族の営みの中、時折壁の向こうから、悲鳴や銃声、そして怒号が鳴り響く。まさに見えない恐怖である。壁一枚隔てて営まれる生きることの矛盾。こんな怖い映画作品がまだ創れるのだ!と息がつまる思いだ。この作品を手がけた監督ならびにスタッフには、その想像力の豊かな表現に拍手である。物語の中心は監督官の父親と母親だが、会話の端端に身も凍るような言葉が何度も交差する。差別の領域を超えた、もはや血のかよう人間とは思えない言動ばかり。なんでこんなこと(ホロコースト)が起きていたのかすら見えてこない愚行の数々。どうしたらここまで人は心を無くすことができるのだろうと、改めて考えさせられる。もちろんこの手の作品を観ると、ドイツ憎しの感情が湧き上がるのだが、ここだけ見て決めることはもちろん出来ない。どこの国にも平和を望む人たちが圧倒的多数いる事は間違いない。ただ人間の奥底に潜む、偏見や差別、そして独り善がりな感情が時々大きなうねりを起こし、視野の狭い愚行へと走り出すのかもしれない。どうしたら戦争は無くなるのでしょうか?答えの見つからないこの問題は、永遠のテーマかも知れません。だからこそ私たち一人一人が真剣に平和について考え、常にアンテナをはり人ごとではないことを認識することが求められているのかも知れません。

P.S. 物語の母親が、夫の転勤でストレスを抱え、給仕の娘に浴びせる言葉「お前なんかいつでも灰にして庭にまけるんだからね」と言うセリフ、めちゃ怖いです。子供がベッドの上で遊んでいるシーンでは、遊具と思いきや人間の銀歯だったりと、凄い描写の連続。まだまだいっぱいりますが、言葉にするだけで気持ち悪くなるのでやめて起きます。

また意図は分かりませんが、2回ほど夜中に行動する少女の姿が、ネガティブ表現で浮かび上がる。妙に静かでアート的な表現になっています。さらにもの凄いインパクトを感じさせる演出で、聴覚を刺激する効果音が何度も使われています。絶妙なタイミングで使われ、心を逆撫でする嫌な感覚がず~~~っと残ります。五感全てを刺激するそんな作品はアメリカ、イギリス、ポーランドの合作作品。アカデミー賞をはじめ多くの映画祭で高い評価をもらっています。A24が提供する作品は、刺激の強いものばかりだが、癖になります。次はどんな作品を提供してくれるやら・・・。

※購入したプログラム、内容とは全く違う美しい写真が使われ、その優れたアイディアにクリエィターの力を感じます。


# by eddy-web | 2024-05-28 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ693 “ミッシング”
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2024.5.21.

ミッシングを鑑賞。予告編で主演の石原さとみが、自ら監督に嘆願し役を勝ち取った渾身の作品と聞き、その熱量に圧倒され劇場へと足を運びました。

鑑賞しまず感じたことは、世の中がこんなにも「人の不幸を喜ぶ」時代になっている現実の恐怖。中島みゆきの名曲「玲子」という楽曲の中に、“ひとの不幸を 祈るようにだけはなりたくないと願ってきたが”と言うフレーズが、人間の中にある本心を吐露している切ない歌がある。だが、ミッシングに至ってはそんな哀愁を通り越し、もはや救いようの無い残酷な言葉や行動の乱舞。映画を見終わって、とても不愉快な気分なる。そしてそれが持続し一日中モヤモヤしてしまった。悪い癖なのだが、感情移入をし過ぎて俯瞰で物事を捉える感覚を損ない、完全に我を忘れてしまった。

物語はある日突然、最愛の子ども(娘)が姿を消した親の痛々しい姿から始まる。そこに群がる報道各社のニュースの争奪戦。昨今よく話題になっている、マスコミのあり方やジャーナリズムのあり方、そしてSNSにスポットを当てた物語は、人間のあり方を問う作品に仕上がっている。似たテーマは今までも沢山取り上げられ、多くの作品が創られている。特にSNSが世の中を動かしているとさえ言われている現代社会では、今最もに注目の集まる題材である。

失踪した娘をなんとか取り戻したく、懸命に手を尽くし探す親の、切羽詰まった感情を痛々しいほど痛烈に表現した映画に涙してしまいます。ですが、その後どうしようもない憤りが沸々と湧き上がり、その怒りみたいなものが全身を縛り付ける嫌な気分を味わう。救いようの無い、虚しさが心を覆い人間でいる事が嫌になる。映画とは色んな意味で、影響をもたらす教科書みたいなもの。ある時は幸せな気分を味わい、ある時は現実と非現実の中を彷徨い、そしてある時は怒りや哀しみの中でふと気が付く自分の生き方の是か非を見つけるヒントをもらう。正直な映画の印象を言いますが、リアルなストーリー展開は心に刺さり自身の生き方さえ考えさせらえる作品に仕上がっています。鑑賞しどんな感想を持つかは、人それぞれですが決して救いのあるお話にはなっていません。それだけに考えさせられる作品です。それでも観る価値は十分ある作品です。「人間はどう生きるべきか」の問題定義として受け止めるのには、良いテーマではないでしょうか?

主人公・森下沙織里役の石原さとみさんが、この作品にかける強い念いがスクリーンから溢れてきます。主人公が背負った自責の念を全身全霊で演じ切っています。危ないギリギリの演技は心を揺さぶり、観客の胸を打つ。ご結婚されお子さんが産まれ、この役にどうしても挑戦してみたかったと言う念いが溢れています。父親役の青木崇高さんも抑えた演技で、母親とはまた違う苦しい胸の内を堪えた難しい役を演じ見事です。また、ニュース報道番組の記者役を演じた中村倫也さんも、報道のあり方に悩む難しい役どころを演じています。ある意味もう一人の主人公として、脇を固めています。「記者」と「人間」の間を彷徨う姿は、息がつまるような場面の連続です。

私はそんな中一番注目し気になった俳優さんは、主人公・沙織里の弟を演じた森優作さん。生き方が上手くなく、人との接触を苦手とする青年のもがき苦しむ姿は、この人以外は考えられないくらい見事な演技でした。人間の持つ弱さを代表するかのよな演技に拍手です。彼を初めてみたのは、塚本晋也監督の野火と言う作品。ヴェネツィア国際映画祭などで多くの賞を獲得した名作ですが、そこに出演していた彼をはじめてみた時、この人は只者では無いと確信しました。塚本晋也監督自ら出演した作品は、第2次世界大戦末期のレイテ島の戦いを描いた人間の内面にメスを入れた極限の物語。今もそのリアルな表現を思い出すと、気分が悪くなるほど戦争への怒りが湧いてきます。リリー・フランキーさんや他の個性的な役者さんの中に入り、新人とは思えない存在感どだしすごいインパクトを受けたのを覚えています。

P.S. 残念ながら救いのあるラストを迎えることのない重たい作品ですが、だからこそ観るべき作品とも言えるのだはないでしょうか?みなさんの心にどう響くかはわかりません。何度も言いますが人間として自問自答するには良い課題作ではないでしょうか?



# by eddy-web | 2024-05-26 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)



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