2017.8.15
とある番組で紹介していたこの作品。タイミングが合わず見過ごしていたが、やっと観る事が叶った。作品名は、“ボンジュール、アン”。引かれたのはもちろん内容にだが、あとひとつだけ理由がある。それは主演のダイアン・レインのファンという、ミーハー的なもの。彼女のデビュー作“リトル・ロマンス”で彼女を観たとき、ただ可愛いだけでない知的で清潔感溢れるものになぜかひかれたわたし。いまも変わらないその雰囲気はさらに年輪を重ね魅力を増している。
さて物語だが、壮年期を迎えたアンの退屈な日常に、突如訪れた新しい発見の旅がはじまるという話。主人公のアンと道先案内をする男ジャックの、ひとときの寄り道道中が中心になるお洒落な大人のストーリーである。監督はかのフランシス・コッポラ婦人である、エレノア・コッポラ。この作品は初の監督作品となる。アンを演じたダイアン・レインは、デビュー時からコッポラ監督に可愛がられ“アウチサイダー”をはじめ数多くの作品に出演している。彼女の女優歴はコッポラ監督とともに創られたと言っても過言ではありません。そんな監督のサポートを長くして来たエレノア監督の初作品の主役とは、きっと深い縁の繋がりに違いない。共に重ねて来たキャリアが、この作品で表現されているのは間違いない。ダイアン・レインはいい年の重ね方をして来ていることが、画面から溢れ出てとてもチャーミング。こんな年の取り方が出来たら、どんなに素敵な事だろう。あらためて惚れ直してしまう女性である。相手役のジャックを演じたアルノー・ヴィアールは、この作品ではじめてお目にかかったが男から観てもカッコイイ男。“メトロで濃いして”で脚本を勤め、俳優・監督.脚本と多彩な才能の発揮しているひとらしい。そのあたりの私生活そのままが、この役で溢れ出ている感がある。流暢に使うフランス後とさりげない演出の手際よさには、どんな女性だってイチコロではないでしょうか?下心が丸見えなのに、何故か憎めないプレイ・ボーイというかオジサンである。この作品は女性に人気みたいで、映画館の中はほぼ中高年の女性客。みなさんきっとアンに自分を重ねて観ているのでしょう?羨ましいほど優雅でお洒落で、贅沢な時間の数々。フランスの美しい風景をバックにカンヌからパリへと向うゆったりとした時間の流れ。美味しいワイン、美味しい料理、そしてそばにいる美しいひと。哀しいかな映画でしか味わう事が出来ません。それにしてもジャックという人物だが、観るからに女タラシ。でも観ているうちに男の色気とはこう言うものなのかと、悔しいが納得させられる。女性を喜ばせる持って生まれた才能、そうこれはまさしく才能である。時間の使い方、知識の豊富さ、演出の上手さ、手際の良さ、上げたら切りがない。それをいとも簡単にしてしまう。才能の何者でもあるまい。わたしなど一生かかっても手に入れる事などないもの。脱帽です。ラストもサラッとしていて、大人感満載。気持ち良い終わり方が、むしろ清々しい。もちろんこの後どうなるかは、解りませんが・・・。ふたりは立派な大人ですから・・・。
日常を離れ、自分探しをするには良い機会をくれる作品だと思います。羨ましいところも沢山ありますが、頑張って近づきたいものです。