よもやまシネマ368 “オリエント急行殺人事件”
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2017.12.11

「ミステリーの女王」と呼ばれ世界中にファンを持つ、アガサ・クリスティ。彼女の代表作のひとつ“オリエント急行殺人事件”(原題:オリエント急行の殺人)を鑑賞。彼女の作品の多くに登場する稀代の名探偵エルキュール・ポアロが、類い希なる推理力で難事件を解決して行く、ミステリーの王道的作品である。1974年に名匠シドニー・ルメット監督により映画化され大ヒットした作品が、再び生まれ変わりわたしたちの前に・・・。20歳の時に観たわたしは、そのラストに「嘘~!そんなぁ~?」って胸を締め付けられたことが思い出されます。作品には当時(今も)大好きだった女優ジャクリーン・ビセットが出ていて、彼女見たさに出かけたのですが思わぬ傑作に出会い、その後のクリスティの作品にも足繁く通うことになりました。ただ、わたしの中では“オリエント急行殺人事件”以上に感動した作品には出会うことが出来ませんでした。あれから43年が経ち、再びこの作品を観ることにとても感慨深いものを感じるわたしです。
という訳で結末を知っての鑑賞ですが、やっぱり傑作だということを再認識させられました。制作にリドリー・スコットを迎え、監督にはケネス・ブラナーがあたり主演ポアロ役を兼務しての作品となっています。74年の作品からとくに目新しい部分は感じられないものの、内容が素晴らしいので充分楽しめる作品なっています。74年の時も豪華絢爛の俳優陣(イングリット・バーグマン(アカデミー助演女優賞受賞)/ローレン・バコール/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ショーン・コネリー/リチャード・ウィドマーク/アンソニー・パーキンスなど)が、まるで演技力を競うかのような緊迫感あふれるものだったことが強く印象に残っています。大好きにジャクリーン・ビセットとが、周りが凄すぎて霞んで見えたのは事実。でもやっぱり美しさでは一番だったといまも思っています。今回も贅沢な布陣(ジョニー・デップ/ペネロペ・クルス/ジュディ・デンチ/ウィレム・デフォー/ミッシェル・ファイファーなど)で俳優さんたちが使われ、前作にも負けない豪華さと熱のこもった演技力で涙を誘います。今作はなんと言っても映像技術の進歩が見事生かされ、美しい映像が臨場感を生み演出と絡んでより印象を深めています。ラストのシーンは、ダビンチの「最後の晩餐」を思わせる演出がなされ、ポアロと乗客たちとの会話に胸が打たれます。
名作が名作と言われる由縁は、この作品を観れば一目瞭然。ましてミステリーとしては、まさに金字塔と言って間違いありません。
最後に74年のポアロを演じたアルバート・フィニー、そして今作のケネス・ブラナーの演技に拍手を贈りたいと思います。口ひげもとても似合っていて格好良かったです。
※今作のラストでは、シリーズ化を匂わす表現で終わりを迎えますがファンとしては望むところ・・・。ぜひ、お願いいたします。
P.S. 原作のヒントとなったとされる「リンドバーグ愛児誘拐事件」。誰もが知っている飛行家リンドバーグの息子が誘拐され殺された事件と、オリエント急行の立ち往生の実際におきた事件を組み合わせ着想し書き上げられたとされています。リンドバーグ愛児誘拐事件は犯人が捕まり、一応解決したと言われていますが、いまだ多くの謎が残され冤罪ではなかったかと論議は続いているとのこと。こんな話が本当にあるのだと思うと、ミステリー好きにはたまらない刺激。それを題材に作品を創り上げる、アガサ・クリスティの才能は「ミステリーの女王」にふさわしい天才と再認識します。
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# by eddy-web | 2017-12-12 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ367 “光”
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2017.12.04

予告を観て気になっていた作品“光”を鑑賞しました。原作は直木賞作家(まほろ駅前多田便利軒)の三浦しをん。彼女の作品の中では異彩を放っているとされる今回の“光”。作品に感銘を受け映像化に挑んだのは、いま最も注目されている監督の大森立嗣氏。“ゲルマニウムの夜”で監督デビューし、日本はもとより海外でも高く評価されている気鋭の監督である。“さよなら渓谷”を観ていますが、人間のこころの奥底に宿る心理を見事に捕らえ、怖いくらい切ない作品でした。三浦作品は“まほろ駅”シリーズを合わせ3度目の映画化。監督はある意味彼女の作品ファンなのかも知れません。
さて感想です。久しぶりにメチャクチャ重たい作品を観せられ、こころが真っ暗になり考えさせられてしまいました。どうしても主人公たちのこころの闇を、紐解きたく「あ~でもない、こ~でもない」とそれぞれの気持ちを探ってみました。自分なりの答えらしきものは出たのですが、正直自信はありません。きっと観るひとにより、異なった意見になると思われます。ただ、誰の中にも存在するひとつの愛の表現なのかも知れません。凄く切ない愛ですが・・・。この手の作品は、観ないと解らないし観ても解らないが観ておく必要はあるようにわたしは感じます。もちろん覚悟して望んでもらわないといけませんが・・・。
映像がとても内容とは違い美しいカット割りで描かれ、写真集をめくる感覚で情景描写が写し出されています。それに反して音楽(音響)が、不愉快きわまりない音を響かせ嫌な気分を増幅します。(音楽を担当したのは、業界では有名なテクノミュージックの巨匠ジェフ・ミルズ氏。)この相反する効果は、主人公たちのこころの動きを紡ぎ出し重たくこころにのしかかってきます。映画とは娯楽という考えがありますが、この作品に関しては楽しむなどという言葉はみつかりません。でも考えさせられるという意味では、これもまた映画の持つ使命を果たした作品ではないでしょうか?原作を読んでないのでなんとも言えませんが、女性が書き上げた作品とは思えないほどエグイ表現でした。でもきっとこれが男とか女とかではない本当の人間の姿なのかも知れません。
主人公三人を演じた、信之役の井浦新、輔役の瑛太、美喜役の長谷川京子、そしてもうひとり重要な役信之の妻を演じた橋本マナミ。みなさんそれぞれに深みのある、怖い演技を見事演じぐいぐい迫ってくる危うさがたまりませんでした。もともと評価が高い男優人は初共演という事ですが、ある種共鳴しあっている感じで凄い緊張感がありました。また、女優さん二人はいままで観たことのない表情をみせこれも素晴らしいものでした。橋本さんはグラビアのイメージが強かったので、とても驚きでした。今後の活躍を多いに期待します。さて、みなさんはこの作品から何を感じ、どう主人公たちのこころを読み取るのでしょうか?聞かせてくれたら嬉しく思います。
P.S. 余談ですが大森監督の家系は、父親が舞踏家で俳優でもある麿赤兒氏。弟が俳優の大森南朋。義理の妹が女優の小野ゆり子さんと、血とはまさにこういうことを指すのでしょうか?

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# by eddy-web | 2017-12-05 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ366 “ゴッホ・最後の手紙”
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2017.11.27

偶然観たTVの報道番組。写し出されたのは、ゴッホの美しい映像世界。それは謎多き彼の最後を描いたアニメーション映画でした。その映像表現の美しさに目 を奪われ、思わず画面に釘ずけになったわたし。表現された映像は今まで観たことのないもので、その全てがアナログで創られたと知り驚愕。そしてその衝撃を 確かめるため、上野へと・・・。
物語は現代でこそ天才の名をほしいままにしている画家ゴッホが、弟テオに宛てた最後の手紙を軸に自らの手で生涯を 閉じた謎に迫るサスペンス仕立ての作品になっていました。これは正直意外な展開で、今だ謎多き自殺の終焉に焦点を当てた、ゴッホのこころの闇と苦悩に迫る もの。見終わった後、彼が何を思いそして何を考えてその瞬間を迎えたのかが、頭の中を駆け巡り割り切れない想いが残ってしまいました。しかし間違いなく彼 が天才だったと言うことだけは、その残した作品の数々に描き込まれている想いが解り、改めて強く引かれるきっかけとなりました。
作品は彼の残した 作品の独特な筆のタッチを蘇らせ、つなぎ合わせた動く絵画となり観たことのない新たな芸術への世界を・・・。その表現は彼の独自のタッチを、125名の画 家たちが62,450枚という数の絵を描きだしまとめ上げたまさに芸術。参加したプロジェクトのメンバーノ中に日本人で唯一参加しているのが古賀陽子さ ん。3ヶ月で1日平均6コマをトータル約580コマを描いたと、インタビューで語っています。それだけ頑張っても映像にするとわずか1分弱と聞き、あらた めてこの作品の凄さと関わったひとたちの並々ならぬエネルギーを感じます。そして何よりスタッフのみなさんが、画家ゴッホをリスペクトしているととを強く 感じました。アニメーションが世界中で文化として認められ始めた現代。新しい表現がどんどん生まれ、その世界は進化を続けている。そんな中で原点とも言え る表現に徹し創られた作品は、言葉では賞賛できないほど素晴らしい芸術作品となり感動を呼びます。スタッフのみなさんに拍手と「ありがとう」の言葉を贈り ます。
見終わって天才画家ゴッホにほんの少しだけ近づけた気がしました。しかし残念ながらその死の真相、最後まで読み取ることは出来ませんでし た。神のみぞ知るとしか言いようがありません。その謎多き生涯があればこそまた、作品が輝いて見えるのではないでしょうか?映画を観た後、彼の残した作品 の一枚一枚に描き込まれた念いを知りたいと強く思いました。是非、みなさん観に行ってください。
P.S. フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッ ホ。生涯デ書き残した作品は、スケッチなども合わせその数2,100点。37歳という若さで世を去った天才画家の作品は、生前1枚しか売れなかったと聞 く。そして有名な作品の多くは、ゴーギャンと過ごしたアルル時代以降に描かれた油絵である。その一枚一枚に浮かび上がる光と影に、彼のこころが描かれてい ると思うとその魅力は尽きない。現在上野で開催されている「ゴッホ展」に足を運び、少しでも彼に近づけたらと思います。
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# by eddy-web | 2017-12-04 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
NANJYa?COLe/31  少し大人への扉を明け始めた頃の、大切なコミック全集。
e0120614_18515603.jpg2017.Nov.27

映画鑑賞と同じくらい好きなものが、漫画購読。キャリアはこちらの方が遥かに古い趣味。小学生の頃にはじまり、時代を超え現在にいたる。小学生の頃は、手塚治虫を筆頭に横山光輝、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄、桑田次郎など上げれば切りがないほどファンの作者がいっぱい。いまでも好きなのは変わらない。いまほど少年雑誌の数もなく、サンデー、マガジン、キング(後に廃刊)そして後発でジャンプとこれくらいでした。小学生の頃は忍者ものが好きで「伊賀の影丸」にはまっていました。手作りで手裏剣などをつくり、遊んでいたことが思い出されます。
今日のお宝は、少しそれより歳を重ねちょっと色気付きはじめたころのもの。大人の世界に憧れ始めた、まだ青臭い年頃に買ったコミックの全集。双葉社が1969年に発行した、全12巻の「現代コミック全集」です。青年向けの漫画を集めたもので、当時15歳の私にとって買うにはちょっと勇気がいりました。例えば石森章太郎の作品にまとめられていた作品“009ノ1”はサイボーグの女スパイが活躍する話で、セクシーなハダカがいっぱい出て来ます。当時どきどきしながら観たことが思い出されます。あの頃はまだ汚れていなかったようです。
※作家はつぎの通り。1.石森章太郎 2.梅図かずお 3.小島剛夕 4.さいとう・たかお 5.佐藤まさあき/南波健二 6.白土三平 7.棚下照生/モンキー・パンチ 8.つげ義春 9.手塚治虫 10.永島慎二 11.平田弘史 12.水木しげる
P.S. 痴話話ですが、友人にこの中の「永島慎二」を貸したら戻ってこなくなり、そのうちだれに貸したのかも忘れて行方不明になりました。結局どうしても解らずネットでこの一冊をやっと手に入れました。やっぱり全巻揃ってのお宝。必死に探した一冊は、他の作品といっしょに現在は本棚に整列しております。青春の紛れもない思い出の一品です。
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# by eddy-web | 2017-11-27 00:00 | NANJYa?COLLe(コレクション) | Comments(0)
よもやまシネマ365 “ジャスティス・リーグ”
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2017.11.23

記念すべき365本目の作品に選んだ作品は、“ジャスティス・リーグ”。何が記念かと言うと、365は一年の日にち。自己満足ですが、1年間毎日映画を見続けたという証し。このブログを立ち上げ、記事をUPしはじめてから10年の歳月が過ぎました。第1作目の「よもやまシネマ」は2007年10月30日、作品はジョディ・フォスター主演の“THE BRAVE ONE"でした。よく泣く自身が思い出されます。そしてこの頃はコメントも控え目だったよう・・・。
さて、大好きDCコミックのエンターテーメント作品“ジャスティス・リーグ”の待ちに待った公開。息子を引き連れ劇場に足を運び鑑賞。あいにくの雨でしたが、祝日ということもあり劇場は大勢のひとで溢れていました。DC Vs Marvelの二大アメコミ出版社の対決が続く映画界。どちらも根強いファンが多く、ヒーロー個々の好みを反映して益々激化している様相。個人的には多いに楽しませてもらっています。先月マーベルの“マイティ・ソー”が公開されたばかりなのに、合わせたかのような今回の“ジャスティス・リーグ”。ぜったいに意識しての公開に違いありません。相乗効果もあり、いい刺激になっているのではないでしょうか?コミック上では以前からの展開なのでしょうが、“アベンジャーズ”VS“ジャスティス・リーグ”はどう観たって対決。威信を掛けた闘いは、作品のクォリティだけでなく色んな意味でファンにはたまりません。
さて、“ジャスティス・リーグ”。Newキャラが加わり地球の平和を脅かす共通の敵に、力を合わせ闘うという勧善懲悪の王道とキャラたちの背景にある内的心理が描かれた物語。娯楽エンターティメント作品としては、おとなも子どもも文句無く楽しめる単純明快な映画です。これだけ豪華なヒーローの集まりで構成されれば中身はさておき、それぞれのキャラファンが嬉しいことは言うまでもありません。でももしかしたら護ひいきのキャラの登場時間については異論もあるのでは・・・。この展開だとこの後、ひとりひとりの単独ストーリーで映画製作がはじまり、ヒーローたちの詳細が明らかになっていくのだろう。それを今から楽しみにしています。フラッシュにはとくに興味が引かれます。どことなくスパイダーマンと同じ匂いがし、一見チャラ男だが裏側に背負っているものに強い興味が湧いています。もちろんアクアマンもですし、サイボーグにも興味は尽きません。今回はかいつまんで各ヒーローを紹介する形の前哨戦といったもの。これからの展開が待ち遠しい限りです。先日観た“マイティ・ソー/バトルロイヤル”もそうでしたが、個性豊かなヒーロー達のプライドが見え隠れする言葉のバトルがクスッと笑いをさそい、その辺がやっぱりコミックといった演出です。宣伝でも使われていますがフラッシュがブルース(バットマン)に「それであなたの能力って?」って聞き、かえる答えが「“金持ち”だ!」って笑えます(ブラックですが!!)。一度くらい言ってみたいセリフですネ~っ。一生ないと思いますが・・・。劇中こんなやりとりが満載で、緊張感の中での余裕すら感じ、それぞれの魅力は充分伝わる構成には大満足。我が息子はどうだったのか、まだ聞いていませんがどんな答えが返ってくるのか楽しみです。さて、ジェネレーションギャップは乗り越えられますでしょうか?近日公開予定の“ブラック・パンサー”も今から楽しみでしょうがありません。
P.S. 前にも一度言いましたが、キャラ全体の中で“バットマン”が一番好きなわたし。何と言うか生身の人間くささがたまりません。観賞後いままで以上に好きになり、オッカケを自負致します。今回の作品で予想はしていた“S”の登場、一番美味しいところを持っていってしまいました。王道まっしぐらってところ。でもわたしはやっぱり“バットマン”が大好きです。
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# by eddy-web | 2017-11-24 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ364 “午前十時の映画祭・グロリア”
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2017.11.21

今日の作品は1981年公開のアメリカ映画“グロリア”。いまから36年前この作品を観たときの感動はいまもそのまま残っている。全然タイプではない女優さんを、一気に好きになった瞬間である。主人公に惚れたのか、それとも女優さんになのかは当時のことなので解りません。今回再びスクリーンで観、その両方とひととしての魅力に惹かれたことを実感しました。グロリア(ジーナ・ローランズ/当時50歳)は中年女性で、どっから観てもケバくちょっと近寄りがたいオーラを発している。目を合わせたらら「何観てんだよ!!」っていきなり言われそうである。もっとも苦手なタイプである。当時の自分から観たら年上の遠い存在。でも、その時はじめて年上の女性のカッコ良い強さをみせられ、こころをわしづかみされました。
“午前十時の映画祭”の今年のラインナップの中で、一番観たかった洋画が“グロリア”で邦画が“泥の河”。2作品ともわたしの中の大好きな作品です。ちなみに余談ですが、黒沢明監督が選んだ映画作品100の中に“グロリア”が入っているそうです。ちょっと嬉しいっていうか、自己満足です。
作品は冒頭のタイトルロール(子どもか描いたような水彩画)をバックに、フラメンコとジャズを合わせたような哀愁漂う音楽ではじまり、これだけでスクリーンに引きずり込まれます。音楽の使い方が絶妙で、感情の波をしたたかに演出し物語の印象を深めています。乾いたニューヨークの街の風景がこれから起きる、逃亡劇を暗示させる見事な演出を改めて実感しました。監督はジョン・カサヴェテス。グロリアを演じたジーナ・ローランズの紛れもない夫で、インデペンデント映画(自主制作)のジャンルを確立したひと。その評価は高く根強いファンが多い。ローランズを使っての作品は9作品にものぼり、妻としてだけでなく最高のパートナーだったようである。
ローランズの格好良さは、観れば納得なのだがこの役作りに彼女はニューヨークの街中でも舐められない女をカメラが回っていない時でさえ徹底したそうである。歩き方を考え、立ち居振る舞いすべてグロリアになりきった彼女だからこそ、素晴らしい作品になったのでしょう。
今回改めて観て細かい演出の素晴らしさに感動しました。演技だけでなく細かいディテールの演出、特に街の空気感や音そんなものが緊張感を高めていく創りになっていてまるでニュ―ヨークにいるような感覚を覚えます。タクシーや地下鉄が上手に使われ、ひととの関わりが見事に描かれラストの絆に落とし込まれ涙します。タクシードライバーがみな良い味をだし、グロリアを助けます。みなわたしたちと同じように、グロリアの格好良さに引かれてのように思え嬉しくなります。家族を失い絶望の淵にいる少年フィルとの逃亡劇は、ハラハラドキドキの連続ですが、二人の会話のユーモラスなやりとりはつかの間の安らぎさえ与える巧みな演出。グロリアは冒頭、“わたしは子どもが大っ嫌い!とくにあんたの!!”と嘯く、子どものフィルは小生意気でグロリアをブタ呼ばわりする。こんな二人がかけがえのない絆で結ばれるラストは、涙なくして観られません。劇中にフィルが、「気が強い女だね!」といい、あとで「タフな女」と変わるところはこの作品のすべてと言えるでしょう。
余談ですが、わたしはケバい女性が苦手と先ほど言いましたがもっと苦手なのが煙草を吸うひと。グロリアはどっちの全面に出たキャラですが、何故か彼女だけは嫌いになれません。あまり思ったこともないのですが、彼女ほど煙草を燻らす姿が絵になりカッコいい女はいないかも知れません。“グロリア”最高です。
P.S. リュック・ベンソン監督の大ヒット作“レオン”の原型とも言われているのが“グロリア”です。1999年にシャロン・ストーン主演でリメイクされた今作ですが、残念ながらはっきり言って問題になりません。
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# by eddy-web | 2017-11-23 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ363 “ローガン・ラッキー”
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2017.11.20

“オーシャンズ11”シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督最新作“ローガン・ラッキー”を鑑賞。ソダーバーグ監督は4年前に映画界を引退し、TVの世界に活躍の場を移していたひと。人気も評価もされていた監督がなぜ?と誰もが思っていた残念な引退劇。いろいろと憶測もあるが、監督のみ知る結論だったのでしょう。その監督が脚本を読み、この作品は絶対に自分の手で創りたいと思わせた作品。その脚本は新人レベッカ・ブラントが書いた処女作品。監督にその作品を持ち、だれに持ち込めばいいかアドバイスを受けに訪ねたのがきっかけだったと聞く。沈黙を守ってきた監督をその気にさせた作品は、見事に映像化されラストの感動へと・・・。エンドロールのスクリーンに映し出される「本作で強盗にあったのは、あなただけ!」の意味は、あなた自身が劇場で確かめてください。小気味良いラストは、こころの中で思わずガッツポーズ。
ジョンデンバーの名曲“カントリー・ロード”の曲が何度も流れ、この作品のコンセプトにぴったりなことは物語が進むにつれ浮かび上がる。この曲は、宮崎監督の“耳を澄ませば”で使われ再ブレイクしたが、今回その原曲の詩の意味を知り深く感動を覚えました。作品はダメダメな人生を歩んで来た男の、一発逆転を描いた物語。豪華な役者を揃えサプライズ的な使い方をした、結構贅沢な作品である。主人公のジミー・ローガンを演じるのは、ストイックさで有名なチャイニング・テイタム。“フォックス・キャッチャー”の演技がわたしの中で強く印象に残っています。弟クライド役は、いま乗りに乗っているアダム・ドライヴァー。癖のある顔立ちだが実力派の若手No1。そして今作のキーマン(伝説の爆破師)を演じるのがダニエル・クレイグ(007ボンド役)。これだけでもすごいのだが、さらっと出てくるメンバーの凄いこと。ヒラリー・スワンク(ミリオンダラー・ベイビー)にキャサリン・ウォーターストーン(ファンタスティック・ビースト)、ライリー・キーオ(プレスリーの孫)など超豪華。ソダーバーグ監督とは、作品で共演したひとたちも多い。何をやってもうまくいかない男だが、だれよりも愛に飢えそしてだれよりも愛が深い。そんな男に惚れ込んだガラクタ集団が仕掛ける現金強奪のミッションの結末は・・・。ラストに娘との愛を選んび終わったと見せかけ・・・???この先はご自分の目で確かめてください。あなたも思わずガッツポーズ間違いなし。
P.S. ダニエル・クレイグがこんなはじけた役をやるとは思いもしませんでした。役者さんって本当に奥が深いです。久しぶりのヒラリー・スワンクさんも、キリッと閉め役に徹しカッコ良かったです。見終わった後、アメリカ映画の懐かしく力強いエネルギーを久しぶりに感じることが出来ました。ソダーバーグ監督には、これを機にますます頑張ってわたしたちを楽しませてほしいものです。
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# by eddy-web | 2017-11-22 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ362 “ラストレシピ/麒麟の舌の記憶”
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2017.11.15

公開前から話題満載の映画“ラストレシピ”が封切られた。まず驚くのはスタッフの豪華さである。監督は“おくりびと”で2008年に日本初のアカデミー外国映画賞に輝いた名匠滝田洋二郎。そして主演は“母と暮らせば”で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を手にした二宮和也(嵐)。企画が秋元康氏、原作・田中経一氏(伝説のTV番組・料理の鉄人を手がけた)、そして脚本は、“永遠の0”で賞賛を浴びた林民夫氏。そうそうたるメンバーが名を連ね、当然期待はMAX。1930年代の満州から現在へと繋がる、壮大な物語は料理を通し繋がってきたひとの絆がきめ細やかに描かれ観るものを感動へと導く。天皇の料理番という人物の過去を探るところから始まるサスペンスミステリーは、時間を飛び越えアッという間に物語りの世界へと誘う。知らず知らずのうちに、前のめりになりスクリーンに釘付けになっていました。人間にはなくてはならない衣・食・住。とりわけ食は一番身近な楽しみのひとつ。それを題材に描き、そして天皇の料理番が任された究極の「大日本帝国食彩全席」となれば、例え食通でなくても興味をそそられる。世界でも有名な中国の満漢全席をも上回る、究極の料理メニューの考案を軍から託された天皇の料理番山形直太朗(西島秀俊)と妻・千鶴(宮崎あおい)の過去を辿る旅。その山形が創ったとされる「食彩全席」のレシピを、現代の天才料理人・佐々木充(二宮和也)が探し始めるところから物語がはじまる。佐々木は「麒麟の舌」を持つ男として妥協を許さない孤高の料理人。そのために、ひとを寄せ付けずただひたすら自分を追い込み味への探求が災いし、ついには破滅の道を辿る。「麒麟の舌」とは一度口にしたものの味を、完璧に再現できるという特別に選ばれたもののみが持つ、音楽で言う絶対音感。この発想からして、すでに興味の渦が脳裏を駆け巡る。そんな彼に降ってわいた幻の究極料理の再現依頼は、時間を乗り越えその大きな時代に翻弄された料理人とそこに関わった人たちの歴史へと繋がっていきます。久しぶりにスケールの大きい作品で、最後までワクワクドキドキして鑑賞しました。出てくる料理のこれまた美味しそうなこと。シズル感に溢れ、何度も生唾を飲み干しました。出演者のみなさんがおのおのの役と真摯に向き合い演じていることが、画面から溢れ出ていました。直太朗を演じた西島秀俊さんが特に印象深く、料理人としての誇りと、ひとの対する深い愛情がひしひしと伝わりました。NHKノ朝ドラ「とと姉ちゃん」の父親役がいまでも思い出され胸がジーンとなります。全く違う役どころの「モズ」も大好きです。“ラストレシピ”はもちろんフィクションですが、ひとの縁って不思議だがあるような気がするのはわたしだけでしょうか?ここまで大きなスケールではないにしても、きっとどっかで繋がっているのではと思うひとは結構いると感じます。思い込みでも、怪しい宗教に関わってもいませんが、そう思う繋がりは大切にしたい自分です。
日本映画、頑張ってます。小手先の技術に溺れず、日本にしか描けない作品をこれからも楽しみにしております。
P.S. 直太朗と千鶴の会話の中で「人を信頼できないで、ひとを喜ばす料理など出来ない」のではと言う、千鶴のセリフが強くこころに残りました。

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# by eddy-web | 2017-11-17 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ361 “IT”
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2017.11.07

海外の作家で、一番好きと言ってもいいスティーブン・キング原作の映画“IT”が公開され劇場へ。氏の作品はいままでも数多く映画化され、その度に大きな話題となっています。それだけ面白くひとを引きつける作品だからこそ、世界中のひとから愛されているのだろう。ただ、映画化された作品はすべて高い評価を得ているわけでは無く、ものにより酷評されることも多い。原作の世界観が表現仕切れず、ファンや評論家のイメージにそぐわないことが多いのも確かなようだ。キングの名を聞けばそれだけで集客が可能なことは事実。だがその反面期待を裏切るようなことになれば、それこそ大変なことになると言うことである。創る側にも覚悟が必要なようである。安易な気持ちでは望めない、高い壁がそこにあり創り甲斐もその分大きいのかも知れない。その昔映画化された“シャイニング”だが、キングはこの作品を酷評したと聞いています。監督は名匠キューブリックである。その監督に「空っぽのキャデラック」と言い放ったそうである。凄い人たちのバトルは、創造を超える怖さを感じます。それぞれの拘りが一致しなかったことだとは察しますが・・・。お~怖っ!!わたしは芸術的な映像表現も好きだし、ニコルソンの鬼気迫る演技にも心酔したのですが?当時、評論家の間でも著しく評価が低かったそうです。天才たちは自分の思い描く世界は、決して譲れない拘りがあるのでしょう。その辺を追求するとまた,違った楽しさがあるかも知れません。
さて、“IT”です。不気味な音楽から始まる物語のはじまりは、もろスティーブン・キングそのもの。グイグイと迫ってきて、過呼吸になりそうです。心臓の弱いひとは、あまり観ない方が良いかも・・・。キングの作品はモダン・ホラーという名で呼ばれ、このモダンというところが他のホラー作品との違いを表している。読んでも観ても、確かにクリエイティブな作風は五感が刺激されアッという間にその世界へと引きずり込まれる。まるで催眠術にでもかかったようで、気がつくと物語の中に自身が入り追い詰められていく。いままで多くの作品が映画化されたが、はじめて発表された“キャリー”はホラー作品としては、まさに金字塔。小説同様にスティーブン・キング氏の名を世界に轟かせました。その後も映画化された作品は多いが、興行的には失敗となるものが多かったようである。そんな中発表された短編非ホラー作品“スタンド・バイ・ミー”が映画化され大ヒット。キングの才能の大きさが再び脚光を浴び、世界に名を再び知らしめました。多くの映画賞を獲得し、誰もが知る名作の一本となりました。ちょっと話が膨らんでしまいました。キング氏の作品がそれほど、話題性があり注目されているということは事実。やっぱり凄いのです。今作品“IT”も30年も前の作品ですが、すでにTV作品として公開され、これを知らないアメリカ人はいないそうです。内容は観てのお楽しみですので、あえてお話は差し控えます。とくにホラー映画のネタばらしは、してはいけない行為ですので・・・。怖かったとだけ言っておきます。何度も「わっ!!」と声を上げてしまいました。
全体の印象は“キャリー”“ミザリー”“ミスト”そして“スタンド・バイ・ミー”を合わせたような作品ではないでしょうか?キャラであるピエロのペニー・ワイズは強烈なインパクトで、人々に笑いを提供する職業の優しいイメージをぶち壊し観たらトラウマになること間違いなし。怖いもの見たさで出かけるなら覚悟して観てください。久しぶりにキング作品を堪能させてもらいました。エンドロールに第一章と出ましたので、きっと続編が?
P.S. 紅一点のベバリー役をやったソフィア・リリスがキュートで可愛かったです。ちょっと不良ぽいっところがさらに魅力的で、少年たちの中にまじりピカイチの存在感でした。彼女を含め少年たちの内面に潜むトラウマがこの物語のキーワードで、みな繊細な演技でその年齢のガラスのような心情を演じていました。これから楽しみな子どもたちです。また、ペニー・ワイズ役のビル・スカルスガイドの狂気の芝居は、ジョーカーを演じたニコルソンを彷彿させる鬼気迫るもので大拍手です。あまりお近づきにはなりたくありませんが・・・。
※“IT”とは、鬼ごっこの鬼の事だそうです。
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# by eddy-web | 2017-11-10 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
よもやまシネマ360 “午前十時の映画祭・悪魔のような女”
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2017.11.06

しばらくぶりに名作映画を観に・・・。今日の作品は1955年公開のフランス映画“悪魔にような女”。わたしは生まれて1歳。この当時の作品はみなモノクロだが、色は無くても色を感じさせる映像表現とでも言うか深みを感じる。主演の女優シモーヌ・シニョレは、ジャンヌ・モロー同様知性の象徴とも言うべきフランスの代表する女優。けっして美人とは言いがたいが、紛れもなく魅力溢れるひとだったに違いない。スクリーンの映し出される一重まぶたのその瞳は、見つめられると背筋が伸びる感じさえ画面から伝わります。当時は悪女の代名詞と言われる役が多かったようだが、晩年は慈愛に満ちた役(燃えつきた納屋など)で世界を魅了した。わたしがはじめて彼女を観たのは、“真夜中の刑事”で旦那さんのイブ・モンタンと共演した作品でした。ある意味メチャクチャ怖かった作品で、いまもその時感じた衝撃は忘れられない。凄かったのはモンタンが演じた刑事が、犯罪を犯し自分の存在を消すために自ら顔に硫酸(塩酸?)を注射器で打つところ。当時20代はじめの自分には、強烈でいろんな意味で印象に残った作品です。その時のシニョレの腰の据わった存在感もまた印象深く印象に残っている。この作品も高い評価を得ているサスペンスである。
さて、話を“悪魔のような女”に戻します。いきなりタイトルロールで不気味な泥水を背景に、馬鹿でかい音量の耳につく音楽が流れ不安をあおる。不快な導入演出で目が釘付けになる。車が雨にぬかった水たまりの道を走って泥を巻き上げる。水たまりには何故か紙の船らしきものが浮かんでいた。洒落たはじまりの演出に、まず感動し引きずり込まれた。
はじめて観たのだが、やはり評価されるだけのことはある作品だと、正直感じました。最後までハラハラドキドキの展開で、先が読めない極上のサスペンスになっていた。女のしたたかさをこれほど見事に創り上げた作品はそうはないと言える一級品である。
シニョレと一緒に殺人に手を染める役をヴェラ・クルーゾーと言う女優さんが演じていましたが、彼女もシニョレに翻弄される役を見事に演じていました。調べるとこの作品の監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの奥様だと知った。この監督さん世界三大映画祭の総てで最高賞を受賞している名監督。ヌーヴェル・ヴァーグの生みのの親とも言われているひとだと解り勉強不足な自分に反省しきり。“悪魔のような女”も公開当時、衝撃的なラストが話題になり制作者側から「鑑賞後に、その内容を口外しないように」と注意がなされたそうである(ウィキペディア参考)。あとで解ったのだが、モンタン主演の“恐怖の報酬”も監督の作品と知り、すべてが結びつき凄い監督さんだと認識を新たにしました。時間があったら作品を探し、他の作品もぜひ観たいと思う自分です。
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# by eddy-web | 2017-11-09 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)



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